覚えられないフシ

2018.09.27.15:20

 わが家の床は杉板です。
 杉は柔らかくて傷や汚れがつきやすいと言われていますが、言われるほど傷や汚れが気になることはありません。
 階段や脱衣室など同じ場所を家族が何度も行き来するところはそれなりに汚れてきますが固く絞った手ぬぐいで拭けばある程度きれいになります。

 毎年やることでもなくて12年生活していて汚れが気になるところを拭いたのは2回だけです。
 傷がつきやすいと言われていますが普段の生活で床に傷がつく場面というのは少ない物です。

 立った位置から茶碗やコップを床に落とすと角で杉床がヘコみますが、わが家ではガラスのコップや茶碗があまり割れません。知人が床にコップや茶碗を落とすと割れてしまうという何気ない会話からそういえばウチでは割れないなぁと気がついた次第です。

 杉床にテーブルと椅子を食卓としているお宅を見せてもらっても椅子ぐらいで杉床が傷だらけになることはないようです。
 杉床で生活している方々に杉床に傷がつく場面について尋ねたことがありました。

 幼い子供がおもちゃを床にたたきつける。
 重い物を引きずる。
 ズボンや布団カバーファスナーなど小さくて固い物を踏みつける。
 掃除機や角のとがった物を落としてしまう。

 汚れや傷は床につくので床は・・・となりやすいのですが、汚れや傷は住まい手の工夫で対処できることが多いように思います。
 新築当初お子さんが小さかったお宅では滑り止めのついたゴザ(畳表の敷物)を敷いていたが小学校に行く頃には使わなくなったと話してくれた方もいました。

 重い物を引きずるときは床との間に座布団を挟んだりしている方は多いと思います。
 杉床は確かに柔らかくて傷や汚れがつきやすい床材ですが、その裏返しでもある感触がサラサラして冷たくない特徴があります。

 住み始めて12年経ってもサラサラして冷たくない感触は変わりませんし、汚れが気になるところは拭けば取れます。
 子供がある程度の年齢になると床を傷つける場面は極端に減りますので床材を選ぶときは長い目で見て欲しいと思います。

 杉床と一口に言ってもわが家のようにフシだらけの床もあれば無フシの杉床もあります。
 無フシの杉床はとてもきれいで部屋がすっきりと見えますが、フシがある床材の何倍もの値段がします。
床の隙間(2月)
 合板フローリングでフシのあるものはほとんど見ないので床材としてはフシがない方がよいのかと思ってしまいます。

 確かにフシがあるとストッキングが引っかかるなどと言ったこともあるのですが、杉床を提供している林業家もそういった住まい手の声を聞いて床材には私たち住まい手が気持ちよく日常生活が送られるように一手間かけてくれています。

 機能的には問題ないとしてもフシは見た目が悪いと多くの方が言います。
 実際に無フシの杉床部屋を見るときれいですが、機能的には違いが無くてもフシが無いだけでとても高価な床材になってしまいます。
 それじゃお金がないから我慢して見た目の悪いフシがある床で生活しているのかと言えばそこはちょっと違います。

 合板フローリングには様々な模様がありますが木目がほとんどです。
 今の技術だったらアニメ・キャラクターでも幾何学模様でも何でも出来るはずですが木目が多いのは人気があるからでしょう。
 キャラクターや幾何学模様にはパターンがあって床や壁材として用いると同じ模様が連続して並ぶことになります。

 私たちは連続している模様は覚えやすいのですが短期間で飽きてしまいます。
 ところが木目にはパターンがなく木目は木目なんだけど同じ模様が連続していません。
 フシのある床も同じでフシはあるんだけど、どの床もフシがバラバラに散らばっているので規則性がありません。

 私は以前、床のフシを数えたことがあるので自室にいくつフシがあるのか数は知っていますが場所まで覚えていません。

 規則性がないと覚えにくいことが幸いして飽きにくい床材として長く違和感なく使えます。
 覚えられないフシのお陰で普通のサラリーマンでも快適な杉床の生活が出来るそんな側面があるように感じます。

木の家での体験

2018.09.16.09:55

 木の家は調湿性があり五感に優しくて住み心地がよいとよく言われます。
 しかし、世の中には木の家ばかりでは無くむしろ木の家は少数派になってしまいました。わが家を見に来られる方は木の家に興味がある方ですからイメージに近いはずなのですが、皆さん一様に驚かれます。何に驚いたのか尋ねて最も多いのが木の使ってある量です。

 木の家ですからと答えると他にも木の家を見てきたけどこんなに木が見えるように使ってある家は初めて見たと話してくれた方もいました。
 いろんな方の話を聞いていると私たちは木の家とどんどん距離が離れているように感じます。

 木の家でのくらしが減ってくるとそこで育つ子供たちは木の家での体験をしなくなります。
 木の家の特徴としてよく言われる調湿に関しても生活の中で体験している方と人に聞いたとか資料で学んだ人とでは捉え方が全く違います。

 木の家での体験が減ってくると木の家のことを知らない方が増えてきます。

 知らないと選ばないので木の家が減って木の家を体験する子供たちが減っていくことになります。

 そもそもわが国ではなぜ木の家が多かったのでしょうか。
 建物火災の研究者は日本人は燃える木で家を建て続ける不思議な民族と言うように木の家は一面だけ捉えるとどうして木の家なのという疑問が出てきます。

 家は人のくらしと一体なので材料が近くにふんだんにあることが最も重要なことです。
 材料があって手間をかけてくれる人がいてそれを使う人がいるという循環は人のくらしそのものです。
 わが国では木で家を建てることがこうした循環を支えてきたわけです。

 木の家が減り手間をかけてくれる林業、製材の方々が減ってしまうと植物の木を家の材料に出来なくなってしまいます。
 材料は輸入すればいいような物ですが、輸入先から提供を止められたら私たちは家さえ自国で建てられない民族になってしまいます。

 私はわが国の健全な発展のために木の家にしたわけではありません。
 昔から木の家は住み心地がよいと言われていたので興味があっただけですが、木の家で生活することは日々のくらしの中から次の世代に体験を引き継ぐ役割もあったことに最近気がついた次第です。

 木の家は燃えますし傷や汚れもつきますがそれでも木の家が建て続けられてきたのには訳があって、木の家に住み続ける知恵や工夫もたくさん蓄積されています。

 無垢の床は汚れやすいと言われますが、ぬらした手ぬぐい(タオルではない)で拭いてみてください。手ぬぐいは汚れを取ってくれるだけではなくて汚れが離れやすいので石けんでちょっと洗えばまたきれいになります。
 手ぬぐいで汚れが取れることが分かると余計な洗剤もいらないし、手ぬぐいの使い方も増えていきます。
 私は無蛍光のさらしを買ってきて必要に応じて切って手ぬぐいとして使っています。

 木の家で生活していれば日常の体験から木の家は何がいいのか、木の家で生活すると住まい手はどうなるのかについて知る機会があるのですが昨今はそれが難しい状況です。

 しかし、富山には丈夫で長持ちして住みやすく美しい木の家を建ててくれる建築士や大工さんがいます。
 日常のくらしから木の家を知る機会は減ってきましたが、木の家を学ぶ機会は残っています。

 誰から話を聞くかは重要です。


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