スポンサーサイト

--.--.--.--:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

虫の跡

2019.01.11.09:35

 わが家に使われているテーブル材のほとんどには写真のような虫の跡が残っています。
 杉の皮を剥いだ丸太からテーブル材用として林業家に製材してもらいました。
 写真のテーブルは厚みが6㎝、食卓テーブルは厚みが12㎝あります。虫の跡

 普通は写真のような丸太の外層部分は切り離してしまうことが多いのですが、建築士からここはどうしますかと尋ねられてせっかく付いているんだからそのまま使おうと言うことになりました。

 最初、家内や子供たちはナニこの気持ち悪い模様は・・・と言っていましたが別に悪さをするわけでもないし害も無いのでそのうち慣れてしまいました。
 今ではこの虫の跡が残っていたお陰で私たち家族は多くのことを学ぶことが出来たし林業家や製材所の苦労も少しだけですが分かるようになったのでわが家ではとても意味のある虫の跡です。

 この気持ちの悪いグニョグニョ模様はスギカミキリムシの仲間で多分ヒメスギカミキリムシの幼虫の這った跡だと思います。
 スギカミキリムシの仲間は成虫が杉の皮に卵を産み付けて幼虫が幹と皮の間を這いながら成長しやがて幹の中に潜ってサナギとなり成虫になります。

 ところが話はもう少し複雑でスギカミキリムシが杉の皮に卵を産み付ければ生まれた幼虫は成長出来るわけではありません。
 スギにも虫に抵抗する手段があって卵が産み付けられるなど傷が付くとスギはヤニという樹脂を分泌します。
 手に付くとベタベタするあのヤニです。

 立木など元気なスギに卵を産んでもあっという間にヤニに包まれるしヤニは虫にとっては毒でもあるのでたとえ幼虫になっても成長はできません。
 スギカミキリムシが成長するにはスギが倒れるとか弱って抵抗力が低くなっていないと都合が悪いわけです。

 また、なんでわざわざ皮の下を這うのでしょうか。
 かじるんだったら別に幹の中に入っても良さそうですがここでもちゃんと訳があります。
 木は皮のすぐ下層にある形成層という部分で活発に細胞分裂をして師部(篩部)と呼ばれる部分と木部という部分に分かれます。
 師部は葉っぱで作られた栄養分などが通りますし木部は自らを支えると同時に根から吸い上げた水が通っていて栄養と水は通り道が違っています。

 さらに、形成層で細胞分裂する際に分裂した片方は形成層の細胞のまま残り、もう片方は幹側であれば木部の細胞になるし、皮側だったら師部細胞になります。
 これを繰り返すことで形成層の内側(幹側)には木部細胞ばかりになって私たちが知っている年輪となって残っていきます。
 外側の師部細胞は内側からどんどん外に押し出されてやがて剥がれ落ちていきます。

 さて、生まれたスギカミキリムシの幼虫は成長するために栄養が必要です。
 スギからヤニなどで抵抗されなければ栄養の通り道である師部を食べるのが理にかなった行動です。
 しかも細胞分裂して間もない頃は細胞自身も太らないといけないので可塑性に富んでいますが、細胞の成熟段階でリグニンが沈着するようになり自らを支えられる丈夫な組織へと変化していきます。

 生まれたてのかよわい幼虫はリグニンが沈着した固い木部よりも栄養が豊富でかじりやすい師部をたどって成長していきます。
 それがあの気持ちの悪いグニョグニョした模様になるわけです。
 模様をよく見ると確かに最初は模様が細いですが徐々に太くなって一番太い模様の先に木に潜った穴が開いています。

 倒木や弱っている木に虫が入りやすいので木が盛んに栄養分を作っている時期よりも栄養を消費して蓄えが減った時期の方が伐採時期としては適しているように思います。
 これが切り旬と言われる時期に大きく関係しているそうです。

 こうしたことを家族に話すと最初は気持ち悪いと言っていましたが物差しで虫の跡幅を測るなど観察するようになりましたし、スギカミキリムシのことを調べたりするようになりました。
 普通は見栄えが悪いと切り取られてしまう部分ですがあればあったで木の家を伝えるツールとしても使えます。

 私はこうしたことを学んだお陰で林業家の伐採ツアーで味の体験が出来ました。
 伐採直後のスギの一部の皮を剥いで師部組織をなめてみると確かにほのかに甘く感じますし、ヤニはとても苦いです。
 皆さんもどうぞとお薦めするようなことではありませんが、味でスギを体験できる伐採ツアーの隠れた魅力の発見につながりました。

comment

Secret

ブログ内検索
最新記事
カテゴリ
リンク
タイトル一覧

全記事タイトルの一覧

月別アーカイブ
2010.12~
メール送信

名前:
メールアドレス:
件名:
本文:

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。